2026/08/17

第23回 睡眠を改善する5つのアプローチ 〜自分は、どこから整えればよいのか〜

こんにちは。
ライフパフォーマンスコーチの前田です。

くまスポでは「フィットネスの向こう側」をテーマに、運動・栄養・休養を通じて、魅力的で快適で丈夫な身体、そして人生そのもののパフォーマンスを高めるための情報を発信しています。

このブログでは、「睡眠を良くすること」だけを目的にするのではなく、睡眠やリカバリーを通して、仕事や趣味、家族との時間をもっと充実させるための考え方や実践法をお届けします。

前回までの「睡眠改善7つの原則」では、眠りを整えるために知っておきたい基本的な仕組みをお話ししてきました。
今回からは、その原則を実際の生活で生かすための「睡眠を改善する5つのアプローチ」を、全7回にわたってお伝えしていきます。

「睡眠を改善するために、具体的に何をすればいいのでしょうか?」

ここまで「睡眠改善7つの原則」を通して、眠りの基本的な仕組みをお伝えしてきました。
しかし、原則を理解しても、実際の生活に落とし込もうとすると迷うことがあります。

朝は決まった時刻に起きる。
夜はスマートフォンを控える。
運動や食事にも気をつける——。

やることが多すぎると、結局どこから手をつければよいのか分からなくなってしまいます。

そこで今回から、これまで学んだ原則を、毎日の行動に変えるための具体的な方法を取り上げます。
その切り口となるのが、次の「睡眠を改善する5つのアプローチ」です。

1. 睡眠環境を改善する

2. 朝の目覚めを改善する

3. 快眠につながる食事と腸内環境をつくる

4. 睡眠圧を高める

5. 夜のリラックス習慣をつくる

大切なのは、5つすべてを同時に始めることではなく、今の自分の悩みと生活を振り返り、最も取り組みやすい入口を一つ選ぶことです。
つまり、睡眠の悩みのタイプによって、入口は異なるのです。

ひと口に「眠れない」と言っても、その状態は人によって違います。
● 布団に入っても、なかなか寝つけない
● 夜中に何度も目が覚める
● 朝、起きることができない
● 睡眠時間は取れているのに、疲れが残る
● 休日になると生活リズムが崩れる
● 夜のスマートフォンをやめられない
悩みが違えば、改善の入口も同じとは限りません。

例えば、外の音や室温、寝具の違和感で目が覚める方なら、まず寝室の環境を見直す方がよいかもしれません。
休日に昼近くまで眠り、日曜日の夜になると寝つけない方なら、夜の工夫よりも、朝の目覚めや日中の過ごし方を整えることが入口になります。
夕食が遅く、食後すぐに床に入る生活が続いている方なら、食事の内容だけでなく、時刻や量を見直す余地があります。

睡眠改善には、誰にでも当てはまる唯一の正解があるわけではありません。自分の困りごとと、現実の生活に合った方法を選ぶことが大切です。


睡眠環境を改善する

光、音、室温、湿度、寝具、寝衣など、私たちの身体は眠っている間も周囲の環境から影響を受けています。

睡眠環境を整える利点は、意志力に頼りすぎなくてよいことです。
一度、カーテンや照明、室温などを見直せば、その後は環境そのものが眠りを支えてくれます。
高価な寝具や機器をそろえることが先ではありません。
まずは今すぐ変えられる部分を確認することから始めます。


朝の目覚めを改善する

良い睡眠というと、夜の行動に目が向きがちです。
しかし、睡眠のリズムを整える大きな起点は「朝」にあります。

起床時刻をなるべくそろえ、朝の光を浴び、身体を起こしていく。
こうした朝の刺激が体内時計を整え、その日の夜に自然な眠気が訪れる流れをつくります。
朝を整えることは、夜の睡眠だけでなく、午前中の集中力や一日の時間の使い方を見直すことにもつながります。


快眠につながる食事と腸内環境をつくる

食事は、何を食べるかだけでなく、「いつ、どのくらい食べるか」も重要です。

就寝直前の重い食事、カフェインやアルコールの取り方、朝食を含む食事時刻の乱れなどは、睡眠を見直す手がかりになります。

ただし、「これを食べれば眠れる」という単純な話でもありません。
まずは、自分が何を、何時ごろ、どのくらい食べているのかを振り返ってみましょう。

仕事や会食の都合で夕食が遅くなる方もいるでしょう。
その場合も、すべてを変えようとせず、「遅い日は少し軽くする」など、現実的な調整点を探します。


睡眠圧を高める

人間の身体には、起きて活動している時間が長くなるほど、眠ろうとする力が高まる仕組みがあります。
これを「睡眠圧」と呼びます。

よく眠れなかった翌日は、なるべく動かずに過ごしたくなるものです。
しかし、長い昼寝や活動量の低下が続くと、夜に必要な眠気が十分に高まらず、さらに眠りにくくなることがあります。

無理な運動は必要ありません。
外へ出る、歩く、家事をする、座りっぱなしを減らす。
こうした日中の活動も、夜の眠気を育てる材料になります。

夜だけを見るのではなく、「昼間にどう起きていたか」を振り返るアプローチです。


夜のリラックス習慣をつくる

最後は、活動する時間から休む時間へ、心身を切り替えるための習慣です。

照明を少し落とす。入浴する。本を読む。呼吸を整える。明日の準備を済ませる。

何を選ぶかは人によって違いますが、「この流れに入ったら一日を終える」という合図をつくることが目的です。

よく言われるのが「夜のスマートフォンをやめましょう」という助言です。
しかし、ただやめるだけでは、空いた時間に何をすればよいのか分からず、元の習慣へ戻りやすくなります。
スマートフォンを見ていた時間を、読書やストレッチ、家族との会話などに置き換える。
やめたい行動だけでなく、その代わりに何をするかまで決めておくことが大切です。

睡眠環境、朝の目覚め、食事と腸内環境、睡眠圧、夜のリラックス習慣という、睡眠改善の5つのアプローチを示した図

すべてを一度に変えなくても大丈夫です。自分に合った入口から始めましょう。


すべてを同時に行う必要はない

ここまで読むと、「結局、全部やらなければいけないのか」と感じるかもしれません。
しかし、最初から5つすべてに取り組む必要はありません。
一度に多くのことを変えると、続ける負担が大きくなり、何が変化につながったのかも分かりにくくなります。

まずは一つ、小さく試してみてください。

● 朝、カーテンを開けて光を浴びる
● 寝室の温度や音を確認する
● 夕方以降のカフェインを控える
● 日中に10分だけ歩く
● 就寝前のスマートフォンを読書に置き換える

この程度からで構いません。
しばらく続けて、寝つきや途中覚醒、朝の目覚め、日中の眠気や疲労感がどう変わったかを観察してみましょう。
合わなければ、やり方を変えるか、別の入口を選べばよいのです。

一つの方法で変化を感じる方もいれば、二つ、三つと組み合わせることで変化が表れる方もいます。
睡眠改善は、正解を一度で当てることではありません。
自分の身体と生活を観察しながら、無理なく続けられる方法を探していく作業なのです。


自分に合った方法を選ぶために

何から始めるか迷ったときは、次の3つを考えてみてください。

1.今、最も困っていることは何か

寝つき、途中覚醒、朝の起きにくさ、日中の眠気など、まず悩みを一つに絞ります。

2.今の生活で、無理なく変えられることは何か

仕事や家庭の事情で、すぐに変えられないこともあります。その中で、時刻、場所、量、手順など、調整できる部分を探します。

3.何が変われば「良くなった」と言えるか

睡眠時間だけでなく、朝の気分、日中の眠気、集中力、疲労感なども含めて振り返ります。

睡眠の目的は、記録上の数字を良くすることだけではありません。
翌日を少し気持ちよく過ごし、仕事や家事、趣味、大切な人との時間に、より良い状態で向き合うこと。そのために眠りを整えるのです。


まとめ——自分に合う入口を一つ選ぶ

今回ご紹介した5つのアプローチは、それぞれ異なる角度から眠りを支えます。
大切なのは、すべてを完璧に行うことではなく、自分の悩みを知り、自分の生活の中で、無理なくできそうなところから始めること。
眠れない自分を決して責める必要はありません。
眠りを支える条件を一つずつ整えていく。
その小さな積み重ねが、睡眠だけでなく、次の日の過ごし方を変えていきます。

※強いいびきや睡眠中の呼吸停止を指摘される、日中の耐えがたい眠気が続く、眠れない状態が長く続いて生活に大きな支障がある場合は、生活習慣だけで解決しようとせず、医療機関へご相談ください。


参考資料・参考文献


次回予告

①睡眠環境を改善する ~眠る力を邪魔しない寝室をつくる~

睡眠を改善するために、最初に見直したいのが「睡眠環境」です。
私たちの身体は眠っている間も、光、音、温度、湿度、寝具など、周囲の環境から影響を受けています。
そして睡眠環境の大きな特徴は、一度整えると、毎晩の意志力や努力に頼らず眠りを支えてくれることです。

次回は、
● 光と寝室の明るさ
● 音への対策
● 室温と湿度
● 寝具と寝衣
● スマートフォンや仕事を寝室へ持ち込まない工夫
など、眠る力を邪魔しない寝室のつくり方を、具体的にお伝えします。

高価な寝具を購入する前に、まず確認したいことがあります。
無理なく始められるところから、一緒に見直していきましょう。


睡眠を改善する5つのアプローチシリーズ

● 第23回 睡眠を改善する5つのアプローチ(今回)

● 第24回 ①睡眠環境を改善する

● 第25回 ②朝の目覚めを改善する

● 第26回 ③快眠につながる食事と腸内環境をつくる

● 第27回 ④睡眠圧を高める

● 第28回 ⑤夜のリラックス習慣をつくる

● 第29回 5つのアプローチをどう使い分けるか


フィットネスの向こう側

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前田 くにひさ

『くまスポ』代表/運動指導者/トレーナー養成講師/睡眠リカバリーコーチ

一般の方から経営者・管理職層まで、幅広い年代の身体と向き合ってきた経験をもとに、「フィットネスの向こう側」を理念として掲げ、運動を通じて仕事や人生を支える身体の在り方を考え、さらにその先にある健康で幸せな人生を追求し、活動しています。

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