2026/02/16

姿勢の乱れは、だいたいチームの「疲労」と似ている?

美しい姿勢。
私たち運動指導者は、トレーニング指導の際、特に初回のトレーニングセッションの冒頭で、クライアントの静的アライメント(静止状態での姿勢)をチェックさせていただくことが多いです。
正面から見と時の、肩や腰の左右の高さの差、頭の位置、腕の開き、足の開き、また横から見て「耳、肩の先端、大転子(お尻の横あたりの骨)、膝、くるぶしの少し前」が一直線に並んでいるかなど。
これらの崩れは外傷などで急激に現れる事も当然ありますが、多くのケースで、それまでの細かなエラーが積み重なった結果である事が多く、放置しておく事で、いずれ肩、腰、膝などの痛みとなって現れます。

まず確認されている事実(2026年2月時点・2025年までの公開情報)

  • 長時間のデスクワークは、首・肩・背中の筋緊張と関連することが多くの研究で報告されています。

  • 慢性的なストレスは、無意識の筋緊張や呼吸の浅さと関係する可能性が示唆されています。

  • 組織心理学の分野では、慢性的な業務負荷やコミュニケーション不足が、組織の機能低下や生産性低下と関連することが整理されています。

これらは「姿勢が悪いからチーム状態が悪くなる」といった直接的な因果関係が証明しているわけではなく、身体と組織の関係については、まだまだ研究の余地がある分野が含まれています。

それでも、運動指導の現場で身体を見ていると、ある共通点に気づきます。


崩れた姿勢は、突然できあがるわけではありません

冒頭で触れたように、姿勢の崩れはそれまでの細かなエラーが積み重なった結果である事が多いです。

例えば「猫背」や「巻き肩」。これらはある日突然始まるものではありません。

  • 忙しい日が続く

  • 呼吸が浅くなる

  • 画面を見る時間が増える

  • 休む余白がなくなる

こうした小さな積み重ねが、やがて姿勢の崩れとして現れます。

チーム運営、組織運営も、どこか似ているところがあります。

当然、イレギュラーなハプニングが起因している事もありますが、業績が落ちたり、チームの雰囲気が悪くなるのも、一晩で起きるわけではないケースが多いのではないでしょうか。

  • 小さなすれ違い

  • 誰も言わない違和感

  • 話しかけにくい空気

  • 余裕のなさ

これらが積み重なり、気づけば“疲れた会社”“疲れたチーム”となってしまいます。


姿勢は、結果であって原因ではない

人間の身体の姿勢は、その人の生活や習慣の「結果」です。

同じように、チームの雰囲気や空気感も、経営や組織運営の「結果」です。

姿勢を無理に正そうとすると、一瞬は伸びます。

しかし、呼吸が浅いまま、疲労が抜けないままでは、当然長持ちせず、すぐに元の「崩れた姿勢」に戻ってしまいます。

チームも同じです。

良いスローガンを掲げても、制度を整えても、根本の負荷や緊張が残っていれば、いずれ元の歪みのある状態に戻ります。


良い姿勢には「余白」があります

整った姿勢の人は、胸を張っているというより、呼吸が深く、動きに無理がありません。

力んでいないのに、崩れにくい。それは筋力だけの問題ではなく、緊張と弛緩のバランスが取れている状態です。

チームも同じではないでしょうか。

  • 意見が言える

  • 失敗を隠さなくてよい

  • 話しかけやすい

そうした組織には、目に見えない“余白”があります。
日々の体のケアや運動が整った姿勢や強い体を作り、それが心や思考のゆとり、余裕、自己肯定感を生みます。
同様に、チームとしての姿勢を整えることは、組織としての余裕や余白につながり、また、最悪崩れた際の「立ち戻るべき姿」を獲得することにもなります。

近年、心理的安全性(※)という概念が広く知られるようになりました。
ただし、それを形式的に導入するだけでは十分とは言えません。

身体で言えば、ストレッチの形だけ真似ても、呼吸が止まっていれば意味がないのと似ています。
※心理的安全性とは、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授(1999)が定義した概念で、「メンバーが失敗や異論を恐れず発言できる状態」を指します。GoogleのProject Aristotle(2015)でも、高業績チームの最重要要素として報告されています。


崩れにくい身体づくりと、崩れにくい組織づくり

WHOや各国の保健機関が推奨しているのは、極端なトレーニングではなく、継続可能な身体活動です。

崩れない身体は、一時的な追い込みではなく、日々の整えによってつくられます。
継続的に適切な運動を行うことは、身体環境の整備の為の強力なツールとなります。

組織も同様です。

  • 定期的な対話

  • 負荷の分散

  • 状態の可視化

  • 違和感の共有

派手ではありませんが、こうした積み重ねが、“疲れにくいチーム”をつくります。


姿勢を整えることは、経営を整えることに似ています

身体を整えるプロセスは、

  • 状態を観察する

  • 無理を減らす

  • 必要な刺激を入れる

  • 余分な緊張を抜く

この繰り返しです。

経営や組織運営も、同じではないでしょうか。

数字だけでなく、空気や表情や沈黙に目を向ける。

身体の姿勢を見れば、その人の疲労や緊張がわかるように、チームの姿勢を見れば、その組織の疲れが見えてきます。
日々の運動習慣と身体の細やかな異変に気付ける感覚を持つ事は、チームの小さな異変に気づく感覚を養うことにもなり得ます。


まとめ

姿勢の乱れは、意志の弱さや、急激に現れたものではありません。

チームの疲れも、誰か一人の責任や急性のものではありません。

どちらも、積み重なった負荷と、余白の不足が生み出すものです。

姿勢を整えることは、単に見た目を変えることではなく、無理のない状態を取り戻すこと。

組織改善もまた、無理のない構造をつくることなのかもしれません。

身体とチームは、思っている以上に似ています。

女性経営者が明るいオフィスで腕を組み、整った姿勢で前を見据える様子と、整理されたデスク環境

整った姿勢と整った職場環境は、組織の健全さを象徴します。

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前田 くにひさ

『くまスポ』代表/運動指導者/トレーナー養成講師

一般の方から経営者・管理職層まで、幅広い年代の身体と向き合ってきた経験をもとに、「フィットネスの向こう側」を理念として掲げ、運動を通じて仕事や人生を支える身体の在り方を考え、さらにその先にある健康で幸せな人生を追求し、活動中。