2026/09/04

第25回 ②朝の目覚めを改善する ~良い眠りは、良い目覚めから始まる~

こんにちは。
ライフパフォーマンスコーチの前田です。

くまスポでは「フィットネスの向こう側」をテーマに、運動・栄養・休養を通じて、魅力的で快適で丈夫な身体、そして人生そのもののパフォーマンスを高めるための情報を発信しています。

このブログでは、「睡眠を良くすること」だけを目的にするのではなく、睡眠やリカバリーを通して、仕事や趣味、家族との時間をもっと充実させるための考え方や実践法をお届けします。

前回は、①睡眠環境を改善するをテーマに、光、音、温度や湿度、寝具、スマートフォンなど、眠りを邪魔しているものを減らす方法をお伝えしました。

今回は「朝の目覚め」がテーマです。

良い睡眠というと、

「夜は何時に寝ればよいのか」
「寝る前に何をすればよいのか」
「どうすれば早く眠れるのか」

と、夜の行動ばかりを考えてしまいがちです。

しかし、夜の自然な眠気をつくる出発点は、実はその日の朝にあります。

朝、どのように起き、どのように身体を活動へ切り替えるか。

その積み重ねが、一日の集中力や活動量だけでなく、夜の眠りにもつながっていくのです。


良い眠りは、夜ではなく朝から始まる

眠れない日が続くと、「今夜こそ早く寝よう」と考える方は多いと思います。

ところが、眠気が十分に来ていない状態で早く布団に入っても、なかなか眠れず、かえって焦りが強くなることがあります。

このようなときは、就寝時刻だけを前倒ししようとするのではなく、まず朝の起床時刻と、起きた後の行動を整えることが大切です。

私たちの身体には、およそ一日周期で睡眠と覚醒、体温、ホルモン分泌などを調整する「体内時計」が備わっています。

面白いのが、多くの人の体内時計は、正確な24時間ではないところです。健康な成人では平均すると24時間10分前後とされ、外からの合図がなければ、少しずつ後ろへずれていく可能性があります。

そのずれを毎日調整するうえで、特に大切なのが「朝の光」です。

起床時刻、光、食事、身体活動など、朝に複数の合図を入れることで、脳だけでなく全身が「一日が始まった」と認識しやすくなります。

厚生労働省のe-ヘルスネットでも、体内時計の調整には光が重要であり、朝から昼頃までに光を浴びることで、遅れがちな体内時計が整えられると説明されています。

つまり、睡眠のリズムを戻すときは、

「早く寝るから、早く起きられる」

だけではなく、

「朝にしっかり起きるから、夜に自然と眠くなる」

という方向から考えることも必要なのです。

起床時刻、朝の光、水分・朝食、軽い身体活動が、日中の活動を経て夜の自然な眠気につながる流れを示した図

起床時刻をそろえ、朝の光を浴びて身体を動かすことが、夜の自然な眠気につながります。


起床時刻をなるべく一定にする

朝の目覚めを改善するために、最初に取り組みたいのが、起床時刻をなるべく一定にすることです。

起きる時刻が日によって大きく変わると、光を浴びる時刻、朝食の時刻、活動を始める時刻も変わってしまいます。

すると、身体にとっては「一日がいつ始まるのか」が分かりにくくなります。

特に注意したいのが、休日の朝です。

平日は早く起きていても、休日に昼近くまで寝てしまうと、体内時計が後ろへずれ、日曜日の夜に眠れず、月曜日の朝がつらくなることがあります。

もちろん、毎日一分のずれもなく起きる必要はありません。

仕事や家庭の予定、前日の疲労、体調によって多少変わるのは自然なことです。

大切なのは、完璧に固定することではなく、起床時刻が大幅にずれないようにすることです。

まずは、

● 毎朝のおおよその起床時刻を決める
● 休日も極端な寝坊を続けない
● 目覚ましを止めた後、そのまま長時間布団に残らない
● 起きたらカーテンを開けるところまでを一つの流れにする

といったことから始めてみてください。

ただし、強い睡眠不足があるときに、睡眠時間をさらに削ってまで起床時刻を守る必要はありません。

日中に耐えがたい眠気がある場合は、まず必要な睡眠時間を確保したうえで、就寝時刻と起床時刻の両方を少しずつ調整していきましょう。


朝の光を浴びる

起床時刻を決めたら、次は光です。

朝の光は、目を通して脳に届き、体内時計へ「朝になった」という情報を伝えます。

起きたら、まずカーテンを開けてください。

可能であれば、窓際へ移動したり、ベランダや玄関の外へ出たり、短い散歩をしたりするのもよいでしょう。

曇りや雨の日でも、一般的には室内より屋外の方が明るいため、無理のない範囲で外の光に触れることには意味があります。

● 起きたらすぐにカーテンを開ける
● 朝食を窓の近くで食べる
● ゴミ出しや犬の散歩を朝の習慣にする
● 通勤時に少しだけ屋外を歩く
● 休日も一度外へ出る

このように、すでに行っている生活行動と組み合わせると続けやすくなります。

太陽を直接見つめる必要はありません。

また、夏の強い日差しや高温、冬の寒さ、転倒の危険などにも注意し、安全を優先してください。

前回お伝えした「夜は光を少しずつ減らす」という工夫と、今回の「朝は光を取り入れる」という工夫は、一つのセットです。

朝を明るく、夜を暗くする。

この昼夜のメリハリが、活動する時間と休む時間を身体に伝えてくれます。


水分、朝食、軽い身体活動で身体を起こす

朝の目覚めは、目を開けただけで完了するものではありません。

脳と身体を少しずつ活動へ切り替えていくことが大切です。

光を浴びることを中心に、水分、朝食、軽い身体活動を組み合わせると、朝のスイッチを入れやすくなります。

水分をとる

起床後は、まずコップ一杯程度の水やお茶を飲んでみましょう。

大量に飲む必要はありません。

口や喉を潤し、身体を動かし始めるための小さな合図として取り入れます。

水分をとるためにキッチンまで歩く、コップを用意する、窓際で飲む。

この一連の行動だけでも、布団から活動へ切り替えるきっかけになります。

なお、心臓や腎臓の病気などで水分量について指示を受けている方は、医師の指示を優先してください。

朝食を生活リズムの合図にする

毎朝、おおよそ同じ時間帯に食事をとることも、生活リズムをつくる合図になります。

必ず豪華な朝食を用意する必要はありません。

ご飯と味噌汁、パンと卵、ヨーグルトと果物など、自分が無理なく食べられるもので構いません。

朝は食欲がないという方は、飲み物だけで終わらせるのではなく、バナナやヨーグルト、スープなど、少量から試してみてもよいでしょう。

大切なのは「理想の朝食」を一度だけ食べることではなく、自分の生活に合った形で続けることです。

朝食と睡眠の関係については、次回の記事でもう少し詳しく取り上げます。

軽く身体を動かす

朝から激しい運動をする必要はありません。

● 背伸びをする
● 肩や首をゆっくり回す
● 椅子から数回立ち上がる
● 部屋の中を歩く
● 家の周りを短時間散歩する
● 洗濯や掃除などの家事を始める

こうした軽い身体活動でも、筋肉や関節が動き、身体を活動モードへ切り替えるきっかけになります。

運動が苦手な方は、「朝のトレーニング」と考えなくても構いません。

光を浴びながら水を飲む。
朝食の準備をする。
家の前まで新聞や郵便物を取りに行く。

この程度の行動から始めれば十分です。

高齢の方や、膝・腰に不安がある方、起立時にふらつきやすい方は、椅子や壁などにつかまり、安全な姿勢でゆっくり身体を動かしてください。


朝の覚醒が、夜の自然な眠気につながる

朝に光を浴び、食事をとり、身体を動かす。

これは、単に朝の眠気を追い払うためだけの行動ではありません。

朝の光によって体内時計が調整され、日中を活動的に過ごし、夜には照明を落として休息へ向かう。

この流れを繰り返すことで、身体は一日のリズムをつかみやすくなります。

朝から日中に十分な光を浴びることは、夜に睡眠を促すホルモンである「メラトニン」が分泌されるリズムを支えることにもつながります。

ただし、一日だけ早起きしたから、その日の夜に必ず眠れるという単純なものではありません。

長く乱れていたリズムが、一晩ですべて元に戻るわけでもありません。

数日から数週間、なるべく同じ時刻に起き、朝の光を取り入れ、日中を活動して、夜は刺激を減らしていく。

その繰り返しによって、少しずつ「朝は目覚め、夜は眠る」というメリハリがつくられていきます。

夜になってから眠ろうと頑張るのではなく、朝から自然な眠気が訪れるための準備を始める。

これが、朝の目覚めを整える本当の目的です。


朝が整うと、一日全体が変わっていく

朝の目覚めを改善する利点は、夜に眠りやすくなることだけではありません。

朝から身体を活動へ切り替えられるようになると、

● 仕事や家事を始めやすくなる
● 午前中の集中力を保ちやすくなる
● 朝食や運動の習慣をつくりやすくなる
● 一日の予定を立てやすくなる
● 生活全体に一定のリズムが生まれる

といった変化も期待できます。

睡眠は、夜だけを切り取って考えるものではありません。

朝の目覚め、日中の活動、食事、仕事、人との交流、夜の過ごし方。

そのすべてがつながって、一日のリズムをつくっています。

朝の目覚めを整えることは、睡眠を改善するだけでなく、仕事や学び、運動、趣味、家族との時間など、人生そのもののパフォーマンスを支える土台づくりでもあるのです。


自分だけでは実施が難しいときは

ここまで読んで、

「大切なのは分かっているけれど、朝はどうしても起きられない」

と感じた方もいるかもしれません。

知識として理解することと、毎朝実行することは別の問題です。

朝は判断力も意志力も十分に働いていないため、目覚ましを止めた瞬間に「今日だけは、もう少し」となりやすいものです。

そのようなときは、自分の意志だけに頼らない仕組みをつくります。

家族と朝食の時間を決める、犬の散歩やゴミ出しを朝の予定にする、起床後に誰かへ短い報告をするなど、人との約束や役割を朝の行動につなげる方法です。

私が行っているオンラインでのグループ活動でも、起床時刻や「光を浴びた」「水を飲んだ」「少し身体を動かした」といった小さな行動を参加者同士で共有する取り組みを行っています。

誰かに厳しく管理してもらうためではありません。

同じ目標に取り組む仲間の存在を、朝の行動を始めるきっかけに変えるためです。

睡眠の問題すべてをグループで解決できるわけではありませんが、自分だけでは続けにくい習慣に取り組むときは、一人で抱え込まず、周囲の力を借りることも有効な方法だと思います。


まずは一つ、一週間試してみる

朝の目覚めを改善しようとして、明日からすべてを変える必要はありません。

まずは、次の中から一つか二つだけ選んで、一週間ほど試してみてください。

● 起床時刻を大きく変えない
● 目覚ましを止めたらカーテンを開ける
● 窓際や屋外で朝の光を浴びる
● コップ一杯程度の水分をとる
● 少量でも朝食をとる
● 立ち上がって、数分だけ身体を動かす

そして、

● 布団から出るまでの時間
● 午前中の眠気
● 日中の集中力や疲労感
● 夜に眠気を感じる時刻
● 実際に眠りにつくまでの時間

が、どのように変わったかを観察してみましょう。

毎日完璧にできたかどうかではなく、「何をすると起きやすかったか」を見つけることが目的です。

自分に合う方法が分かれば、無理に頑張らなくても続けられる朝の形が少しずつできてきます。


まとめ 〜夜の眠りは、朝の一歩から始まる〜

良い眠りをつくるために、夜の過ごし方はとても大切です。

しかし、それと同じくらい、朝の過ごし方も重要です。

起床時刻をなるべく一定にする。
朝の光を浴びる。
水分をとり、朝食を食べる。
軽く身体を動かす。

こうした小さな行動が、脳と身体に一日の始まりを伝えます。

朝にしっかり目覚め、日中を活動的に過ごし、夜には自然と休息へ向かう。

その一日の流れを整えることが、良い睡眠につながっていきます。

今夜、無理に早く眠ろうと頑張るのではなく、まず明日の朝、カーテンを開けることから始めてみてください。

その小さな朝の一歩が、夜の自然な眠気と、その先にある一日のパフォーマンスを変えるきっかけになるかもしれません。

※起床が極端に困難な状態が続く、日中に耐えがたい眠気がある、強いいびきや睡眠中の呼吸停止を指摘される、気分の落ち込みや意欲低下が続く場合は、生活習慣だけで解決しようとせず、医療機関へご相談ください。


参考資料・参考文献

● 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
年代や生活状況に応じた睡眠時間、生活習慣、光、運動などについてまとめられています。
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf

● 厚生労働省 e-ヘルスネット「概日リズム睡眠・覚醒障害」
体内時計の周期や、朝と夜の光が睡眠・覚醒リズムへ与える影響について解説されています。
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-006.html

● 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
規則正しい起床・就寝時刻、光、運動など、快眠につながる生活習慣が紹介されています。
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html

● 厚生労働省 e-ヘルスネット「あなたの睡眠の質、大丈夫?」
朝や日中の光と体内時計、夜のメラトニン分泌との関係が分かりやすくまとめられています。
https://kennet.mhlw.go.jp/slp/event/sleep_quality/index.html


次回予告

③快眠につながる食事と腸内環境をつくる ~何を食べるかだけでなく、いつ、どう食べるか~

睡眠と食事は、別々の問題のように見えて、互いに深く関係しています。

身体に良いものを食べていても、夕食の時刻が遅すぎたり、食べる量が多すぎたりすると、眠りを妨げることがあります。

一方、空腹が強すぎても、なかなか眠れないことがあります。

次回は、

● 夕食の時刻と量
● 空腹、満腹と睡眠
● カフェイン、アルコールとの付き合い方
● 朝食と生活リズム
● 腸内環境と睡眠の関係

についてお伝えします。

「何を食べれば眠れるのか」という単純な答えを探すのではなく、いつ、どのくらい、どのように食べるか。

毎日の食事を、夜の休息と翌日のパフォーマンスにつなげる方法を一緒に考えていきましょう。


睡眠を改善する5つのアプローチシリーズ

第23回 睡眠を改善する5つのアプローチ

第24回 ①睡眠環境を改善する

● 第25回 ②朝の目覚めを改善する(今回)

● 第26回 ③快眠につながる食事と腸内環境をつくる

● 第27回 ④睡眠圧を高める

● 第28回 ⑤夜のリラックス習慣をつくる

● 第29回 5つのアプローチをどう使い分けるか


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前田 くにひさ

『くまスポ』代表/運動指導者/トレーナー養成講師/睡眠リカバリーコーチ

一般の方から経営者・管理職層まで、幅広い年代の身体と向き合ってきた経験をもとに、「フィットネスの向こう側」を理念として掲げ、運動を通じて仕事や人生を支える身体の在り方を考え、さらにその先にある健康で幸せな人生を追求し、活動しています。