2026/07/27

第20回 睡眠の原則⑤ 最初の90分を守る ~回復のゴールデンタイム~

こんにちは。
ライフパフォーマンスコーチの前田です。

くまスポでは「フィットネスの向こう側」をテーマに、運動・栄養・休養を通じて、魅力的で快適で丈夫な身体、そして人生そのもののパフォーマンスを高めるための情報を発信しています。
このブログでは、「睡眠を良くすること」だけを目的にするのではなく、睡眠やリカバリーを通じて、仕事や趣味、家族との時間をもっと充実させるための考え方や実践法をお届けしています。

今回は、「睡眠改善7つの原則」の五つ目、

「最初の90分を守る ~回復のゴールデンタイム~」

というお話です。

※まだお読みでない方は、こちらもご覧ください。

第16回 睡眠改善7つの原則①「しっかり起きたら、眠くなる」
〜起きる時間が眠りを決める〜

第17回 睡眠改善7つの原則②「人間には体内時計がある」
〜朝の光が夜の眠気をつくる〜

第18回 睡眠改善7つの原則③「最適な睡眠時間は人それぞれ」
〜8時間睡眠の常識から解き放たれよう〜

第19回 睡眠改善7つの原則④「空腹では寝付けない、満腹では眠りは浅くなる」
〜昼の眠気は、夜の眠りにもつながっている〜

睡眠時間は7時間以上取りましょう。
そんな話を聞いたことがある方は多いと思います。

もちろん睡眠時間は大切です。

睡眠時間には個人差があります。
自分に合った睡眠時間の考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶ 第18回「最適な睡眠時間は人それぞれ」

しかし、睡眠は「長さ」だけでなく、その「質」も非常に重要です。
なかでも、眠り始めの最初の睡眠周期、いわゆる「最初の90分」が重要だと考えられています。
※睡眠周期の長さには個人差があります。本記事では、眠り始めの最初の睡眠周期を、一般的に知られている「最初の90分」と表現します。

睡眠中は、一晩の中で何度も深い眠りと浅い眠りが繰り返されますが、一番深い睡眠が現れるのは、実は眠り始めなのです。

つまり、

最初の90分が、その日の睡眠の質を大きく左右する時間となります

今回は、この「回復のゴールデンタイム」とも言える、「最初の90分」についてご紹介します。

睡眠改善7つの原則⑤「最初の90分を守る」を図解。深睡眠による身体の回復、成長ホルモンの分泌、脳のメンテナンス(グリンパティックシステム)の3つの働きと、睡眠の質を高める3つの実践ポイントをまとめたインフォグラフィック。

眠り始めの最初の90分は、身体と脳を回復させる「ゴールデンタイム」。深睡眠・成長ホルモン・脳のメンテナンスの3つの働きと、今日からできる睡眠改善のポイントを図でまとめました。


深睡眠は最高のリカバリータイム

睡眠には、大きく分けて「ノンレム睡眠」「レム睡眠」があります。
この二つは、個人差はありますが、およそ90分周期で繰り返されると言われています。
そのうち、ノンレム睡眠の最も深い段階を「深睡眠」と呼びます。
深睡眠は、特に眠り始めの最初の睡眠周期(最初の90分)に多く現れます。

この時間帯は、心拍数や血圧が下がり、呼吸もゆっくりになります。
身体が本格的な休息・回復モードへ移行する時間です。
外からの刺激にも反応しにくくなり、「ぐっすり眠った」と感じやすいのもこの睡眠です。

以上から、この時間帯が、
身体が本格的に回復モードへ入る時間ということが言えます。


成長ホルモンは寝始めに多く分泌される

「成長ホルモン」と聞くと、子どもが大きくなるためのホルモンというイメージがあるかもしれません。
しかしこれ、大人にとっても非常に重要なものなのです。

成長ホルモンには、

・筋肉や組織の修復
・疲労回復
・皮膚や血管の修復
・脂肪の代謝

など、多くの働きがあります。

成長ホルモンは、眠っている間ずっと同じ量が分泌されているわけではなく、成人では、入眠後に訪れる最初の深いノンレム睡眠に伴って、大きく分泌されることが知られています。

眠り始めの睡眠が何度も妨げられる状態では、運動後の回復や身体の修復に必要な働きが、十分に発揮されにくくなる可能性があります。

運動だけではなく、当然、仕事で疲れた脳や身体を回復させるためにも、最初の90分は非常に重要な時間帯なのです。


睡眠中、脳では「掃除」が行われている

近年の研究では、睡眠中に脳脊髄液などの流れが変化し、日中の活動によって脳内に生じた代謝物の排出を助ける仕組みがあることが分かってきました。
この脳内の循環・排出システムは、「グリンパティックシステム」と呼ばれています。

例えるなら、
昼間フル稼働したオフィスを、夜中に清掃スタッフの方々が掃除してくれているようなイメージです。
掃除が十分にできなければ、翌日の仕事がしにくくなるように、脳もメンテナンス不足になってしまいます。
またオフィスで多くの人が働いている最中には大掛かりな清掃がしにくいように、脳も覚醒して活発に働いている時間より、睡眠中の方がメンテナンスを行いやすいとも考えらます。

睡眠不足や浅い睡眠が続くと、脳や身体の回復が不十分になり、

・集中力が続かない
・判断力が落ちる
・物忘れが増える
・疲れが抜けない

といった状態につながることがあります。

また、睡眠と脳内の老廃物排出、認知機能との関係については、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患との関連も含め、現在も研究が進められています。
もちろん、睡眠だけで病気の発症が決まるわけではありませんが、脳の健康を保つうえでも、十分な睡眠を確保することは大切です。

睡眠とは、「何もしない時間」ではなく、
身体と脳がメンテナンスを行う時間なのです。

睡眠を含めた「回復力」が、仕事や人生のパフォーマンスにどう関わるのかについては、こちらの記事でも詳しくお伝えしています。

第13回「なぜ今、回復力が必要なのか」


最初の90分を守るためにできること

では、どうすれば最初の90分を深く眠れるのでしょうか。
今日から取り組みやすいポイントを3つご紹介します。

① 就寝前は強い光を避ける

夜間に強い光を浴びると、体内時計が後ろにずれ、自然な眠気が訪れる時刻も遅くなることがあります。

朝と夜の光が体内時計に与える影響については、第17回「人間には体内時計がある」もご覧ください。

まずは、就寝前の30〜60分だけでも、画面を見る時間を減らしてみましょう。


② 寝る直前の満腹を避ける

前回の記事でもお伝えしたように、満腹状態では消化活動が続くため、睡眠が妨げられることがあります。

空腹と満腹が睡眠に与える影響については、第19回で詳しく解説しています。

寝る直前ではなく、少し余裕を持って夕食を済ませることをおすすめします。
もしどうしても夕食が遅くなる場合は、極力、胃に負担のかかりにくいものを選択することも重要です。


③ 入浴は就寝の1〜2時間前がおすすめ

お風呂で一度体温を上げ、その後ゆっくり体温が下がるタイミングで眠気が訪れます。
お風呂で一度体温を上げ、その後、手足から熱が逃げて深部体温が下がっていくタイミングで、自然な眠気が訪れやすくなります。
この流れを利用することで、スムーズな入眠につながります。


この記事でわかること

睡眠は、「長く寝ればいい」というものではなく、質がポイントです。

まず意識したいのは、眠り始めの最初の90分。

この時間には、

✔ 深睡眠による身体の回復
✔ 成長ホルモンによる修復
✔ 脳の掃除(グリンパティックシステム)

という重要な働きが集中しています。

睡眠は、今日の疲れを取るためだけのものではありません。
明日の自分のパフォーマンスを高めるための準備です。
そして、良い睡眠は、日中の過ごし方によって育まれます。
良い一日が良い睡眠をつくり、良い睡眠が翌日の良い一日をつくる。

その好循環を支えている大切な時間が、眠り始めの「最初の90分」なのです。

まずは、
「最初の90分を守る」
ことから始めてみてはいかがでしょうか。

まずは、
「最初の90分を守る」
このことから始めてみてはいかがでしょうか。


次回予告

睡眠の原則⑥

体内時計は朝で決まる

〜朝の光が夜の眠りをつくる〜

「夜眠れない原因は、実は朝にある。」

朝の光が、どのように体内時計を整え、夜の自然な眠気につながるのかを解説していきます。


睡眠改善7つの原則シリーズ

  • 第16回 睡眠改善7つの原則①
    しっかり起きたら、眠くなる
    〜起きる時間が眠りを決める〜
  • 第17回 睡眠改善7つの原則②
    人間には体内時計がある
    〜朝の光が夜の眠気をつくる〜
  • 第18回 睡眠改善7つの原則③
    最適な睡眠時間は人それぞれ
    〜8時間睡眠の常識から解き放たれよう〜
  • 第19回 睡眠改善7つの原則④
    空腹では寝付けない、満腹では眠りは浅くなる
    〜昼の眠気は、夜の眠りにもつながっている〜
  • 第20回 睡眠改善7つの原則⑤
    最初の90分を守る
    〜回復のゴールデンタイム〜(この記事)
  • 第21回 睡眠改善7つの原則⑥
    体内時計は朝で決まる
    〜朝の光が夜の眠りをつくる〜(次回)

フィットネスの向こう側

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前田 くにひさ

『くまスポ』代表/運動指導者/トレーナー養成講師/睡眠リカバリーコーチ

一般の方から経営者・管理職層まで、幅広い年代の身体と向き合ってきた経験をもとに、「フィットネスの向こう側」を理念として掲げ、運動を通じて仕事や人生を支える身体の在り方を考え、さらにその先にある健康で幸せな人生を追求し、活動しています。