2026/08/09
「明日こそ、目覚ましが鳴ったらすぐに起きよう」
そう決めたはずなのに、朝になると目覚ましを止めもう一度布団をかぶりなおす…笑
「今夜こそ、早めにスマホを置こう」
そう思っていたはずなのに、気がつけば布団の中でSNSや動画を見続け、時間が溶けていく…。
このような経験はないでしょうか。
そして、できなかった自分に対してそれらの経験とセットの様に、
「自分は意志が弱い」
「どうして続けられないのだろう」
などと落ち込んでしまう。
しかし、それらが本当に意志の弱さだけが原因なのかというと、実は決してそうとも言い切れないのです。
朝起きた直後は、まだ頭も身体も十分に目覚めていません。
夜は、一日の仕事や家事を終え、判断する力も残り少なくなっています。
つまり朝と夜は、一日の中でも特に、意志力による行動が難しい時間なのです。
もし枕元に目覚まし時計があれば、布団の中から簡単に止めることができます。
もし手を伸ばせば届くところにスマートフォンがあれば、つい触ってしまう。
逆に、目覚まし時計を立ち上がらなければ届かない場所に置けば、まず身体を起こす必要があります。
スマートフォンを寝室の外で充電する様にすれば、布団の中で何となく見続けることは難しくなります。
これらは日常の中でよく起こりがちな、イメージしやすい例です。
人の行動は、本人の決意だけではなく、
といった環境の影響を受けています。
良い行動は始めやすくする。
やめたい行動は、少しだけ始めにくくする。
これが環境設計の基本の考え方です。

良い行動は始めやすく、やめたい行動は始めにくく。意志力に頼らない環境をつくることが、習慣改善の第一歩です。
朝起きてから、何をするか考える。
それだけでも、眠気の残る頭には負担になっています。
だからこそ、私からのオススメは、「朝の行動は前日の夜に準備をしておく事」です。
例えば、
といった具合です。
大切なのは、「朝の自分に頑張らせない」こと。
起きてから迷わなくても、自然と最初の行動に移れる状態を、元気の残っている前日の自分がつくっておくのです。
夜も同じ事が言えます。
布団に入ってから、
「スマホを見るのをやめよう」
「リラックスしよう」
と頑張っても、これらは意思の力に頼った行動。
実際にやろうとすると、数日はできたとしても、継続的に行うのは意外と簡単ではありません。
前回もお伝えした通り、人間は努力して覚醒することはできても、努力してリラックスすることはできないからです。
そこで、眠くなる前に環境を切り替えます。
スマートフォンを見ること自体が、悪いわけではありません。
問題は、やめたい時間になっても、すぐ手の届くところにあることです。
自分を責める前に、まず環境を変えてみる。
そんなシンプルな事だけで、夜の行動は変わりやすくなります。
何か新しい習慣を始めるとき、例えば
「毎朝6時にカーテンを開ける」
「毎晩10時にスマホを置く」
と、時刻だけを決めることがあります。
もちろん、それも一つの方法です。
しかし毎日の予定が変わりやすい人は、時刻も変更しがちです。
その場合、すでに行っている行動を「きっかけ」にする方が続けやすいことがあります。
例えば、
というように、
「○○をしたら、次に△△をする」と行動をつないでいきます。
同じきっかけの後に同じ行動を繰り返すことで、その行動は少しずつ自然な流れとなり、体にしみつき、習慣化されていきます。
最初から完璧な朝習慣や、長いナイトルーティンをつくる必要はなく、まずは、30秒から1分でできる行動を一つだけ決め、継続する。
その小ささが、習慣を続ける力になります。
CBTとは、認知行動療法のことです。
睡眠の分野では、不眠症に特化したCBT-I(不眠症に対する認知行動療法)という方法があり、睡眠に関する行動や考え方を整理しながら、眠りを整えていきます。
ここで大切なのは、前述の様に、何かができなかったときに自分の性格や意志の弱さのせいにしないことです。
例えば、夜にスマートフォンを見続けてしまったとき、
「またできなかった。自分は意志が弱い」
と考えるのではなく、
「今の置き場所では、手に取りやす過ぎるのかもしれない」
「スマホを置いた後にすることを、まだ決めていなかった」
と考えてみる。
朝起きられなかったときも、
「自分はだらしない」
ではなく、
「目覚ましの場所を変えてみよう」
「そもそも睡眠時間が足りていただろうか」
と、行動と環境を振り返ります。
自分を責めても、明日の行動は変わりません。
しかし仕組みを一つ変えれば、明日の行動が変わる可能性があります。
もちろん、今回お伝えしている環境設計だけがCBT-Iではありませんが、
できなかった自分を責めるのではなく、起きたこと、考えたこと、取った行動を分けて見直すことは、CBTの考え方を日常に取り入れる一つの入り口になります。
認知行動療法には段階があり、最初の段階は行動を変えるフェーズと言われています。
その後、その行動によって認知が変わり、最終的に様々なことを受け入れる事ができるフェーズへと進んでいきます。
最初のフェーズである行動の変化を上手く引き出す事ができれば、生活習慣改善への大変大きな一歩になります。
環境を変えてみる事は、その為の非常にパワフルな一手となります。
※長く続く不眠や、日中の生活に支障が出るほどの眠気がある場合は、生活習慣だけで解決しようとせず、医療機関などの専門家へご相談ください。
今回のタイトルでは、あえて、
「環境からしか変わらない」
という強い表現を使いましたが、もちろん、意志が必要ないということではありません。
環境を変えようと決め、最初の一歩を踏み出すときには、意志が必要です。
しかし、その行動を毎朝、毎晩続けていくところまで、意志力だけで乗り切ろうとすると苦しくなります。
「気合い」「根性」はとても力強い言葉ですが、長く継続する事を考えると、非常に曖昧な言葉なのです。
意志力の役割は、毎日自分を奮い立たせることではありません。
意志力をあまり使わなくても続けられる環境を、最初につくること。
そのために意志力を使うのです。
ここまで、7回にわたって睡眠改善の原則をお伝えしてきました。
最後に、もう一度全体を整理してみます。

睡眠は、夜だけでつくられるものではありません。日中の活動から就寝前の環境まで、7つの原則はすべてつながっています。
七つ目の原則は、それまでの六つを毎日の生活で実行するための土台でもあります。
朝の光が大切だと知っていても、カーテンを開けるところまで行動につながらなければ、生活は変わりません。
夜のリラックスが大切だと知っていても、枕元にスマートフォンがあり、仕事の資料が目に入る状態では、頭と身体は休息へ向かいにくくなります。
知識を行動へ変え、行動を習慣へ変える。
その間をつなぐものが、環境です。
この7つを一言でまとめるなら、
「睡眠を変えようとするのではなく、眠れる身体と環境を整えよう。」
ということになります。
「朝起きられない」
「夜スマホを見てしまう」
それだけで、自分の意志が弱いと決めつける必要はありません。
人の行動は、思っている以上に環境の影響を受けています。
まずは、
この三つを意識してみてください。
すべてを一度に変える必要はありません。
今夜、スマートフォンの充電場所を変える。
明日の朝、目覚ましを止めたらカーテンを開ける。
まずは、上記のような、シンプルにできる事一つで十分です。
睡眠を改善するということは、自分の意志を鍛え続けることではなく、自然と良い行動を選びやすい一日をつくることです。
そして、その一日の積み重ねが、睡眠だけでなく、翌日の仕事、運動、趣味、そして大切な人と過ごす時間を整えていきます。
睡眠改善の原則を知っても、
「では、自分は何から始めればよいのだろう?」
と迷う方も多いと思います。
睡眠を実際に改善する入口は、大きく五つあります。
すべてを一度に行う必要はありません。
自分の生活や悩みに合った入口を一つ選ぶだけでも、睡眠は変わり始めます。
次回からは、この五つのアプローチの特徴と使い分け方を、具体的にお伝えしていきます。
魅力的で快適で丈夫な、ワンランク上の身体づくりを通じて、人生のパフォーマンス向上をサポートしています。
一般の方から経営者・管理職層まで、幅広い年代の身体と向き合ってきた経験をもとに、「フィットネスの向こう側」を理念として掲げ、運動を通じて仕事や人生を支える身体の在り方を考え、さらにその先にある健康で幸せな人生を追求し、活動しています。